心身症とは、「身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態を言う、ただし神経症やうつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除外する」といった内容で、日本心身医学会では定義づけしています。この心身症は疾患名ではなく病態名ですので、内科領域の疾患と重複しています、代表的なところでは頭痛、気管支喘息、本態性高血圧症、消化性潰瘍、単純性肥満症、頻尿などが挙げられています、したがって一般の内科疾患と区別する為に、心身症による気管支喘息では気管支喘息(心身症)と記載されます。現在、西医における心身症の治療法は、原因として心理的社会的因子が関与していますので、薬物療法以外に、心理療法、環境調整、自律訓練法、行動療法、バイオフィードバック療法などなどがあり、心身両面からのアプローチが試みられています。心身症に対する鍼灸治療は、器質的疾患を伴うものは西医での治療と併行して行いますが、機能的障害によるものは鍼灸治療のみで高い治療効果を挙げることができます、これは鍼灸治療の持つ体質改善作用が心理的因子に良好な影響を及ぼすことができるからです。治療は根本治療として、体質改善とリラクゼーションを目的とした全身治療を行い、各症状に対しては対症治療として背部、腹部のツボに対する治療と経絡治療を行います。
心身症によるものと見られる疾患は、内科領域のみならず皮膚科、耳鼻咽喉科、整形外科、小児科、産婦人科、眼科、歯科などの臨床各科で遭遇しますので、それぞれの治療者は常に念頭においているとは言うものの、マニュアル的な治療に終始している現状では、なかなか適切な治療を受けられないのが実情ではないでしょうか。鍼灸治療はもともと全人的な治療を行っていますので、それぞれの愁訴に対して、充分な治療時間を通じあらゆる角度からアプローチすることが可能です、したがって西医での治療が思わしくない場合は、お近くの鍼灸院で治療されてみてははいかがでしょうか。